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Philip の 続・ちょっといい話

夢見る三本の木

 古くから伝えられている「三本の木」の伝説をご存じですか。それは次のようなものです。

 イスラエルの国に、夢見る三本の木がありました。ベツレヘムの野原に枝を茂らせたオリーブの木、ガリラヤ湖のほとりに根を張った樫の木、そして、エルサレムのはずれに高くのびた松の木でした。オリーブの木の夢は、宝の箱になることでした。オリーブの木は、世界で一番の宝物をその中に入れることができるようにと、願っていました。ところが、オリーブの木は、なんと、家畜のえさを入れる箱になってしまったのです。オリーブの木の飼い葉桶は暗い洞穴の中にいれられて、太陽の光を見ることができませんでした。動物に蹴られたり、かじられたりして、傷だらけでした。毎日、動物の臭いをかぐのはいやでたまりませんでした。オリーブの木は、その夢が破れてがっかりしていました。

 ところがどうでしょう。星が明るく輝いたあの夜、飼い葉桶になったオリーブの木に、赤ちゃんが寝かせられたのです。そして、天使の歌が空に響いたかと思うと、羊飼いたちがやってきてその赤ちゃんを拝むではありませんか。なんと、この赤ちゃんは神の御子でした。オリーブの木は、世界で一番すばらしい宝、神の御子を抱きしめることができたのです。オリーブの木の願いはかなえられたのです!

 ガリラヤ湖のほとりの樫の木の夢は、豪華な船になることでした。王さまを乗せて、大きな海を航海することが、樫の木の願いでした。ところは、樫の木は、小さなボートになりました。大きな海ではなく、小さなガリラヤ湖に浮かべられました。王さまを乗せるどころか、この船に乗ったのは、貧しい漁師たちでした。船にはいつも魚が散らばり、樫の木にも魚の臭いがこびりついてしまい、樫の木は、夢が破れたことをいつも嘆いていました。

 ある日のことです。ガリラヤ湖に突然、大嵐が起こりました。樫の木のボートは、湖に呑み込まれ、これで自分もおしまいかと思いました。ところが、そのボートに乗っていたひとりの人が立ち上がって、大声で叫びました。「黙れ。静まれ。」すると、どうでしょう。あんなに荒れ狂っていた嵐がピタリと止んで、ガリラヤ湖は波一つない静かな湖となりました。その時、樫の木はこのお方こそ神の御子だということを知りました。樫の木は、王の王である神の御子をお乗せすることができたのです。樫の木は自分の夢がかなって、心から喜びました。

 エルサレムのはずれにあった松の木の夢は、みんなが自分を仰ぎ見る、高い木になることでした。実際、松の木は、他のどんな木よりも高く、その夢はかなえられたかのように見えました。ところが、ある日のこと、雷が松の木に落ち、松の木は無惨にも裂け、倒れてしまったのです。何の役にも立たなくなった松の木は、野原にただ転がっているだけで、誰にも、見向きもされないものになってしまいました。松の木の夢は、あの雷の日に砕けてしまったのです。

 ところが、この松の木にローマの兵隊たちが目をつけ、運びました。松の木は四角い柱になり、長い柱と短い柱が組み合わされて、十字架になりました。ローマの兵隊は、十字架になった松の木にひとりの人をはりつけにしました。その手と足から血が流れ出て、松の木は赤く染まりました。昼日中というのにあたりは真っ暗になり、ついにその人は死にました。その時、十字架を見守っていたローマの隊長は、十字架のもとに跪き、「まことにこの人は神の子だ。」と叫びました。

 その時、松の木は知りました。自分の上で死なれたお方が、神の御子だったことを。神の御子は、人類の罪のために身代わりの死を遂げられたのです。しかし、御子は復活し、弟子たちにご自分の生きておられることを示された後、天にお帰りになりました。それ以来、御子を信じる人たちは、十字架を立て、それを仰ぎ見るようになりました。松の木は、みんなが自分を仰ぎ見るようにと願いましたが、今では、全世界のひとびとが仰ぎ見る最初の十字架になったのです。松の木の夢もかなえられたのです。

 この神の御子とは誰でしょう。ベツレヘムで生まれ、ガリラヤ湖の嵐をしずめ、そして、十字架で死なれ、復活され、今も生きておられるイエス・キリストです。イエス・キリストは、人々が長い間願い求めていた罪からの救い、永遠の命を実現してくださったのです。キリストを信じる者は、不思議なしかたで、その夢が実現し、その願いがかなえられるのです。

 「この福音は、神がその預言者たちを通して、聖書において前から約束されたもので、御子に関することです。御子は肉によればダビデの子孫として生まれ、聖い御霊によれば、死者の中からの復活により、大能によって公に神の御子として示された方、私たちの主イエス・キリストです。」 (新約聖書・ローマ人への手紙1:2-4)

(2007年4月)

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