Philip's Bookcase |
アメリカのプロテスタント教会のコンテンポラリー礼拝は、礼拝というよりも、コンサート、レクチャー、エンターテーメントのようになってきています。そこでは日常と同じ音楽と話題を見聞きしますので、教会や礼拝に違和感を持ちにくいと思います。たしかにそれは、伝道のために効果的であり、酔いしれるようなロック調の音楽は人々の感情の解放にも役に立つでしょう。しかし、私には、主の日の礼拝はそれで良いのだろうかという疑問が長い間ありました。ならば、たんに古い形式の礼拝に戻せばよいというものでもないでしょう。聖書の原則を問い、歴史を参照しながら、なおも、新しい形の礼拝を模索していく、そういう努力が必要と考え、「礼拝」を学んでいます。この本は、私の「礼拝」の学びに簡潔な情報を提供してくれるもので、おそらく、私にとって手放せない本のひとつになるでしょう。
これは新書版でわずか136ページにすぎませんが、600項目に及ぶ、あらゆる伝統の礼拝形式を扱っており、コンテンポラリー礼拝しか知らない人には、教会の礼拝の豊かさに驚かされることでしょう。もちろん、この本には「コンテンポラリー・ワーシップ」の項目もあります。そこには「現代風の礼拝は、形式張らず、プレイズ・ミュージックを使い、マルチメディアを駆使し、人々の興味やエンターテーメント、若い世代の言語に目を向けたものである。<所属(belonging)>や<実生活との関連性(relevance)>などがキーワードになっている」とありました。
私が目指している礼拝は決して古色蒼然としたものではありませんが、ここに定義されているコンテンポラリー・ワーシップでもありません。コンテンポラリー・ワーシップは「形式ばらない」と言いながら、とてもワンパターンなところがあります。最初に歌を歌い、次にスライドを使ってレクチャーを聞き、アウトラインをシートに書き込むというパターンです。元気に楽しく歌えばそれで賛美になるわけではありませんし、説教は「アウトライン」以上のものです。コンテンポラリー礼拝では聖餐はめったに祝われません。礼拝は日常の切断であり、礼拝には日常を越えたものがなければ、礼拝が礼拝としての機能を果たせないのではないでしょうか。
賛美にエレクトリック・ギターやドラムを使ってはいけないと思いませんが、「使わなければいけない」とも思いません。「静か」なことが「沈んでいる」ことではないように、「賑やか」であることが「燃えている」ことでもありません。礼拝に relevance を強調するあまり reverence(崇敬)を忘れてはいけないと思います。
祈りや伝道に関する本は数多くあって、良く読まれますが、礼拝に関する本は、英語圏でもあまり多くはありません。礼拝がクリスチャンの生活にとって一番大切なものでありながら、礼拝を考えさせてくれる本、礼拝に関する本があまり書かれず、読まれないのは不思議なことです。そお中でこの本が出版されたことの意義は大きいと思います。
著者 | Provance, Brett Scott |
書名 | Pocet Dictionary of Liturgy & Worship |
出版社・出版年 | InerVarsity, 2009 |
ISBN | 978-0-8308-2707-7 |