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Philip の ちょっといい話

帰っておいで

 イラク戦争のおり、さまざまなところに「黄色いリボン」が飾られました。あのリボンは兵士たちが無事に帰ってきますようにとの祈りのシンボルでした。なぜ、「黄色」が使われているかというと、英国では黄色が「身を守るための色」とされていたからです。他の国々でも黄色は「喜び」「幸せ」「希望」「向上」などの意味を持つ色とされています。愛する人の帰還を願うのに、黄色いリボンが最もふさわしいものだったのです。

 アメリカには「黄色いハンカチ」というストーリーがあります。1967年春のこと、シカゴの下町から出たセントルイス経由で南部に向かう一台のグレイハウンド・バスに、イースター休みを故郷で過ごすために大勢の学生が乗っていました。バスの中で陽気にはしゃいでいる学生たちにまじって、ひとりの初老の男が乗っていました。学生たちは、この男が気になって声をかけたところ、彼は、ぽつり、ぽつりと身の上話しを始めました。

 彼は、五年間刑務所にいて三日前に釈放されたばかりだったのです。彼は妻や子どもたちに会いたいと思ってバスに乗ったのです。しかし、彼の妻が彼を迎えてくれるかどうか、彼にはわかりませんでした。なぜなら、彼は五年前、刑務所から「おれのような男を待つ必要はない。よい機会があったら、再婚しなさい。」という手紙を書き送っていたからです。彼は、釈放されてすぐ、「もし迎えてくれるなら、村外れの樫の木にハンカチを結びつけておいてくれ。」という手紙を速達で送り、バスの時間を知らせたというのです。

 いよいよ彼の村が近付きましたが、ハンカチがなければ、彼はそのままバスを乗りすごしていくつもりだったのです。バスが大きなカーブを曲がると、樫の木が見えてきました。すると、その樫の木の枝という枝に、何十枚、いや何百枚もの黄色いハンカチがまるで、黄金の花を咲かせているかのように、結びつけられていたのです。彼の妻は、彼を待っていてくれたのです。バスは、その樫の木の前に臨時停車し、学生たちは、その男を「ゴーイング・ホーム」の歌声で送り出しました。

 神もまた、私たちに「帰っておいで」と呼びかけて、待っておられます。「わたしのところに帰れ。そうすれば、わたしもあなたがたのところに帰ろう。」(マラキ書3:7)。聖書の中には、神の「黄色いハンカチ」が数多く、はためいているのです。

(2003年9月)

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