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Philip の ちょっといい話

最大の犠牲

 あの9月11日から一年が経ちました。世界貿易センタ−の後片付けが思ったよりも早く、5月中に完了しました。ニューヨークの復興が進んでいく中で、私たちは、あの悲惨な出来事を、早くも過去のものにしようとしています。しかし、あのテロによって、愛する人々を失った人々の悲しみはまだいえていませんし、あの時の怪我のために今も苦しんでおられる方々がいらっしゃることでしょう。そうした方々に、一日も早く、神さまのいやしが届きますよう、祈ります。

 あの日、ニューヨークのワールド・トレード・センターで、一瞬のうちに何千人もの命が奪われました。また、あのビルで働いていた人々を救い出すため働いた消防士たちが数多く殉職されました。彼らの、文字通り、いのちがけの働きを、私たちは決して忘れてはいけません。命は尊いものです。私たちは命を粗末にしたり、無駄にしたりしてはいけません。しかし、私たちには、他の人の命を守るために、自分の命をささげなければならない時があります。9月11日、多くの人の命を救うために、命をささげられた方々のことを思いめぐらしていた時、私は、今からちょうど90年前、多くの人の命を救うために自分の命を投げ出した、ひとりの人のことを思いおこしました。

 1912年4月14日、それは、あのタイタニック号が、最初の航海からたった5日目に、沈没した日です。乗客、乗員2200名のうち、1500名が氷の海に投げ出され死んでいきました。このタイタニック号に、ジョン・ハーパーという牧師が、ナナという6歳になる娘と一緒に乗っていました。シカゴのムーディ教会で3ヶ月間奉仕をするために、この船に乗っていたのです。船が沈み始めた時、ジョン・ハーパー牧師は、娘をライフボートに乗せると、船に引き返し「女、子どもやまだ救われていない者をライフボートに入れてくれ。」と叫び歩いていました。

 そうしているうちに、まだ救命胴衣をつけていない未信者に出会った時、彼はそれを譲って、言いました。「心配いらないよ。私は、海に沈むのでなく、天に昇るのだから。」ハーパー牧師は、海に投げ出された後も、最後の最後まで、「主イエスを信じなさい。救われなさい。」と伝道しつづけたのです。彼の最後の伝道によって、6名の人々がイエス・キリストを信じて救われたのです。

 ジョン・ハーパー牧師は、他の乗客を救うため、救命胴衣までも与えて、海の藻屑と消えていきました。しかし、彼の死は無駄にはなりませんでした。彼によって信仰に導かれた人たちは、キリストが自分のために犠牲となって死んでくださったことを、決して忘れなかったことでしょう。ジョン・ハーパー牧師は、自分の命をささげて多くの人を救いましたが、それは、イエスが、私たちのために命をささげ、それによって私たちを救ってくださったことを知っていたからでした。

 イエスは言われました。「わたしは良い牧者です。…わたしは羊のためにわたしのいのちを捨てます。」(ヨハネ10:14-15)私たちは、自由で平和で豊かなアメリカで生活をしていますが、この自由は、おのずと与えられたものではなく、この自由を勝ち取るために血を流し、命を投げ出した人々の多くの犠牲の上になりたっています。私たちのたましいが、本当の自由や平安、そして豊かさを得るために、イエスの犠牲があったのです。イエスは、私やあなたのために命を投げ出してくださったのです。

 私のために、命を投げ出してくれた人がいるということを知ったら、私たちの人生はどんなに変るでしょうね。「私はイエスに命がけで愛されている」ということが分かったら、どんなに勇気が、元気が出てくることでしょう。9月11日を思い起こし、人々の命と安全のために勇敢に働き、犠牲となられた方々を思うにつけ、私たちを生かしてくれる最大の犠牲が、私たちのイエスの十字架での犠牲だったということを心に留められたら幸いです。

(2002年9月)

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