2:1 イエスが、ヘロデ王の時代に、ユダヤのベツレヘムでお生まれになったとき、見よ、東方の博士たちがエルサレムにやって来て、こう言った。
2:2 「ユダヤ人の王としてお生まれになった方はどこにおいでになりますか。私たちは、東のほうでその方の星を見たので、拝みにまいりました。」
2:3 それを聞いて、ヘロデ王は恐れ惑った。エルサレム中の人も王と同様であった。
2:4 そこで、王は、民の祭司長たち、学者たちをみな集めて、キリストはどこで生まれるのかと問いただした。
2:5 彼らは王に言った。「ユダヤのベツレヘムです。預言者によってこう書かれているからです。
2:6 『ユダの地、ベツレヘム。あなたはユダを治める者たちの中で、決して一番小さくはない。わたしの民イスラエルを治める支配者が、あなたから出るのだから。』」
2:7 そこで、ヘロデはひそかに博士たちを呼んで、彼らから星の出現の時間を突き止めた。
2:8 そして、こう言って彼らをベツレヘムに送った。「行って幼子のことを詳しく調べ、わかったら知らせてもらいたい。私も行って拝むから。」
2:9 彼らは王の言ったことを聞いて出かけた。すると、見よ、東方で見た星が彼らを先導し、ついに幼子のおられる所まで進んで行き、その上にとどまった。
2:10 その星を見て、彼らはこの上もなく喜んだ。
2:11 そしてその家にはいって、母マリヤとともにおられる幼子を見、ひれ伏して拝んだ。そして、宝の箱をあけて、黄金、乳香、没薬を贈り物としてささげた。
2:12 それから、夢でヘロデのところへ戻るなという戒めを受けたので、別の道から自分の国へ帰って行った。
今年のサンデースクール・クリスマス祝会では、クリスマスペーェントが、聖書朗読と賛美をおりまぜて行われました。このようなトラディショナルなクリスマス・ページェントは、何年かぶりとのことで、皆さん、大喜びで、その良さを見直したようです。私も、クリスマスには、どちらかといえば、トラディショナルな賛美や劇が好きです。クリスマスツリーの中に人間が入って歌う、リビング・クリスマス・ツリーをダラスで最初に見た時「これはすごいなぁ」と思いました。リビング・クリスマス・ツリーがある時には、他の州から来た観光バスが教会の前に何台も並びます。それを見るためだけにダラスに行ってもいいくらいです。また、サンディエゴでは、クリスチャンの劇団があり、毎年クリスマスには「トラディション・オブ・クリスマス」というショウをします。これも、とても楽しく、また、人々の思いをキリストに向けさせるものです。
クリスマスの劇で、みなさんはどの場面に感動しますか。私にとって一番感動的な場面は、東の博士たちが、キリストに、黄金、乳香、没薬をささげるところです。実は、マタイの福音書を書いたマタイも、三人の博士たちがキリストを礼拝するためにやってきたことを、感動を込めて描いています。「見よ」ということばが、1節と9節で使われています。これは、普通でない出来事、とても大事なことが起こった時に使うことばで、この言葉にマタイの感動がこめられているように思います。
マタイが東の博士たちがキリストを訪ねてきたことについて、なぜ感動を覚えたのでしょうか。その理由を考えてみましょう。
一、キリストは全世界の王
１節に「見よ、東方の博士たちがエルサレムにやって来て」とあります。ここで「見よ」、注目せよと言われているのは、イエス・キリストは、遠い国の人々からも慕われ、愛される全世界の王だということです。確かに、キリストは「ユダヤ人の王」としてお生まれになり、東の博士たちも「ユダヤ人の王としてお生まれになった方はどこにおいでになりますか。」と尋ねています。しかし、キリストはユダヤ人だけの王ではなく、全世界のすべての人々の王としてお生まれになったのです。詩篇65:5に「私たちの救いの神よ。あなたは、恐ろしい事柄をもって、義のうちに私たちに答えられます。あなたは、地のすべての果て果て、遠い大海の、信頼の的です。」とあるとおり、聖書は、ユダヤの人々だけでなく、全世界のすべての人々が神を求め、神に立ち返ることを預言しています。
クリスマスの劇では、東の博士たちは、アジア、アフリカ、ヨーロッパから来た三人の王様ということになっています。私が見たクリスマスの劇では、きらびやかな衣装を身に着け、頭に冠を戴いた三人の王たちが、それぞれ自分の乗り物に乗って、ステージにいる、幼子イエス・キリストのもとに進んでいきました。三人の王たちは、キリストを認めると、乗り物から降り、その冠を脱ぎ、キリストの前にうやうやしくひれ伏して、贈物をささげました。キリストは、この世の力ある者も、知恵ある者も、このお方の前にひれ伏して、礼拝されるべきお方です。「メサイア」に歌われているように、 "The Lord of lords" "The King of kings" 「王の王」「主の主」です。 私は、この場面を見るたびに、貧しい姿でお生まれになっても、キリストは、すべての者が愛し、慕い、あがめるべき、全世界の主であり、王であるという事実を思い起こし、感動を覚えます。
ベツレヘムの飼い葉桶に寝かせられた赤ん坊がユダヤの王であり、ローマの属国となり、見る影もなくなっていた小さな国ユダヤの王が、やがて世界の王となるということを、誰が信じたでしょうか。しかし、遠い国からはるばる博士たちがやって来たことは、イエスが王であり、全世界の王であることを物語っているのです。
二、キリストは預言の成就
次に「見よ」ということばが使われているのは9節です。「見よ、東方で見た星が彼らを先導し、ついに幼子のおられる所まで進んで行き、その上にとどまった。」博士たちは、星を見て、ユダヤ人の王の誕生を知りました。博士たちは、さまざまな書物に通じていて、旧約の「私は見る。しかし今ではない。私は見つめる。しかし間近ではない。ヤコブから一つの星が上り、イスラエルから一本の杖が起こり、モアブのこめかみと、すべての騒ぎ立つ者の脳天を打ち砕く。」（民数記24:17）ということばに触れていたのかもしれません。しかし、ユダヤの人々や、聖書の専門家のような知識は持っていませんでした。ですから、ともかくもエルサレムまでやってきて、「ユダヤ人の王としてお生まれになった方はどこにおいでになりますか。」と尋ねたのです。エルサレムの学者たちは、聖書を調べ、それが「ベツレヘム」であることを教えました。博士たちは、星の光に導かれてエルサレムまでやってきましたが、エルサレムについてからは、星の光だけでなく、聖書の光、預言の光によって、キリストのもとに導かれていきました。そして、聖書のことばのとおり、キリストはベツレヘムにおいでになっていたのです。キリストは聖書の約束のすべてを成就してくださったお方です。
「星の光」は、自然の光を意味します。確かに、自然界は神の栄光を物語ります。また、歴史も神の導きを私たちに教えます。しかし、それらは限界があります。人間の知恵や知識も、ある程度までは私たちに真理を教えるのですが、究極的な真理に私たちを導くことはできません。救い主を見出すには、自然界や人間の社会にある光だけでなく、神のことば、聖書の光が必要なのです。ある統計では、アメリカのクリスチャンのうち60%が聖書を神のことばと信じています。では、聖書を神のことばと信じる人たちが、毎日聖書を読み、聖書から力を得、導きを得ているかというと、残念ながらそうではなく、聖書を神のことばと信じるクリスチャンの60%が、日曜日に礼拝で聖書を開いてから、次の日曜日に礼拝で聖書を開くまで、一週間の間一度も聖書を開かないというのです。これでは、私たちが霊的な力をなくしてしまうのは当然です。もうすぐ新年を迎えようとしていますが、新しい年も、必ずしも見通しが明るいとはかぎりません。そんな中で、私たちは、テレビのニュースや評論家の意見に左右されるのでなく、しっかりと聖書を学び、聖書に導かれていかなければなりません。聖書はこう言っています。「また、私たちは、さらに確かな預言のみことばを持っています。夜明けとなって、明けの明星があなたがたの心の中に上るまでは、暗い所を照らすともしびとして、それに目を留めているとよいのです。」（ペテロ第二1:19）
クリスチャンにも、この世の嵐は押し寄せてきます。試練に遭って、悩んだり、迷ったり、また落胆してしまうこともあるでしょう。しかし、私たちには、みことばの光があります。「あなたのみことばは、私の足のともしび、私の道の光です。」（詩篇119:105）あなたの歩む道に不安を覚える時、それが暗く見えるときこそ、忍耐をもって祈り、信仰に踏みとどまって、みことばの光で行く道を照らしいただきましょう。
三、キリストは栄光の主
第三に、注目したいのは、博士たちがささげた贈り物です。贈り物については「見よ」という言葉が使われていませんが、博士たちがささげた贈り物は「見よ」と言ってもいいような品物です。「黄金、乳香、没薬」は当時、最も高価なものでした。マリヤがささげたナルドの乳香は300デナリはしただろうと言われています。300デナリといえば一年分の収入に相当します。博士たちが持ってきたものは、それにまさるものだと思われます。これらの高価な贈り物は、キリストの栄光を表わしています。イエスのおられたところは、おそらくベツレヘムの貧しい家だったろうと思われますが、博士たちは、外見の貧しさを見ても疑うことなく、魂の目で、キリストのうちにある栄光を見、その栄光にふさわしい最高の贈り物をささげたのです。
博士たちのこの贈り物は「賢者の贈り物」と呼ばれています。しかし、人の目には博士たちは、とても、賢い者、知恵ある者とは見えなかったでしょうね。博士たちが自分たちの国を旅立つ時には、自分たちの国の人たちから、「どこにいるかもわからない赤ん坊に会うために、危険を冒してまで旅行することはない」と言われたことでしょう。ユダヤに着いてからも、エルサレムの人々からは怪しまれ、ベツレヘムの人々からは、疑いの目で見られたかもしれません。しかし、博士たちは、本当の意味で賢い人々、知恵ある人々であり、また、その贈り物は「賢者の贈り物」と呼ばれるにふさわしいものでした。エルサレムにいた人々は、聖書を調べて、キリストが生まれるのはベツレヘムだと、正確に言い当てました。ところが、エルサレムの人々は、誰ひとりベツレヘムに行かず、何一つキリストにささげませんでした。みことばの知識は信仰の基礎であり、とても大切です。しかし、行いの伴わない知識だけの信仰は、魂のない身体のようなもので、神に喜ばれるものではなく、何の良いものも生み出すことはできません。
遠い国から、あらゆるものを後回しにして旅してきた博士たちのように、私たちも、私たちの人生の旅路において、キリストを求める足、最も良きものをささげる手を持ちたいものです。信仰の足、信仰の手を働かせて、全世界の王、栄光の主、イエス・キリストを、このクリスマスに、心からあがめるものとなりましょう。
（祈り）
父なる神さま、御子イエス・キリストのお生まれを、今年もこのように祝うことができありがとうございました。東方の博士たちが、長い道のりを、さまざまな危険を冒しながらも、キリストを礼拝するために旅してきたように、私たちも、人生の旅路で、なおも、主イエス・キリストを求め続けていくことができるよう、あなたのみことばの光をもって導いてください。そして、全世界の王、栄光の主を礼拝する喜びで満たしてください。愛するキリストの御名で祈ります。
12/23/2001