2:15 御使いたちが彼らを離れて天に帰ったとき、羊飼いたちは互いに話し合った。「さあ、ベツレヘムに行って、主が私たちに知らせてくださったこの出来事を見て来よう。」
2:16 そして急いで行って、マリヤとヨセフと、飼葉おけに寝ておられるみどりごとを捜し当てた。
2:17 それを見たとき、羊飼いたちは、この幼子について告げられたことを知らせた。
2:18 それを聞いた人たちはみな、羊飼いの話したことに驚いた。
2:19 しかしマリヤは、これらのことをすべて心に納めて、思いを巡らしていた。
2:20 羊飼いたちは、見聞きしたことが、全部御使いの話のとおりだったので、神をあがめ、賛美しながら帰って行った。
アドベント（待降節）も第三の日曜日を迎えました。アドベントには四本のキャンドルを、ひとつずつ灯していきます。最初のキャンドルは「預言のキャンドル」と呼ばれ「希望」を表わし、二番目のキャンドルは「天使のキャンドル」で「平和」を表わしましたね。第三のキャンドルは、「羊飼いのキャンドル」で「喜び」を表わし、第四は「ベツレヘムのキャンドル」で「愛」を表わします。今年のアドベント礼拝では、アドベント・キャンドルのそれぞれにちなんだお話しということで、「希望」と「平和」についてお話ししましたが、今日は「喜び」についてお話しします。
アドベント・キャンドルは、「悔い改め」や「節制」を表わす「紫」色をしていますが、「喜び」のキャンドルだけは、「紫」色を薄めた「薔薇」色をしています。「薔薇」色が使われるのには、クリスマスの喜び、天国の喜びを先取りするという意味があります。「待ち望む」というのは、ただぼんやりと時が来るのを待つとか、苦しい時を我慢するということではありません。それは、主の約束のことばを信じて、それが必ず成ると信じて待つことです。皆さんも、それぞれ、長い間、それがかなえられるようにと祈っている課題があることでしょう。祈りがすぐに聞かれないと、私たちは忍耐を無くし、「神さま、どうして何もしてくださらないのですか。」とつぶやいてしまうこともあります。そのような時も、主は、その祈りに答えようとして、さまざまな状況の中で働いておられます。神は、みこころにそった祈りは必ず聞かれるということを示すため、それが成就する前にその前兆を示してくださることがあります。それを信仰の目をもって見ようではありませんか。このアドベントに、そのような信仰を養われ、「主を待つ」ことを学びたいと思います。そして、神の約束が成就する時の喜びを先取りして味わいたいと思います。
さて、今日は「喜び」という主題をお話しするわけですが、私は、このメッセージを準備する間、いったい羊飼いたちは、何を喜んだのだろうと思い巡らし、三つのことを見つけました。皆さんは、羊飼いが、いったい何を喜んだと思いますか。いろいろな答えが返ってくるかもしれませんが、今朝は、私が見つけたものを、皆さんに紹介したいと思います。
一、自分の救い主を知る喜び
羊飼いは何を喜んだのでしょうか。天使を見たことでしょうか。いいえ、天使たちが現れた時、羊飼いたちは「ひどく恐れた」とありますから、天使を見たことではなかったようです。天使は驚き、恐れている羊飼いに「恐れることはありません。今、私はこの民全体のためのすばらしい喜びを知らせに来たのです。きょうダビデの町で、あなたがたのために、救い主がお生まれになりました。この方こそ主キリストです。あなたがたは、布にくるまって飼葉おけに寝ておられるみどりごを見つけます。これが、あなたがたのためのしるしです。」（ルカ2:10-12）と言いました。「あなたがたのために、救い主がお生まれになりました。あなたがたは、…飼葉おけに寝ておられるみどりごを見つけます。」天使のメッセージは、羊飼いに、救い主が、他の誰のためでもない、あなたがたのために生まれたのだと語っています。羊飼いたちは、自分たちの救い主が生まれたとの知らせを聞いて喜んだのです。
聖書の時代、羊を連れて野山を歩き回っている羊飼いたちは、安息日を守らず、神殿に礼拝に行くこともせず、また、会堂で律法を学ぶこともしない、低級な人々、救いからほど遠い人々だと考えられていました。聖書に「取税人や罪人」という言葉が何度か出てきますが、羊飼いたちもそのカテゴリーの中に入れられていたのです。しかし、救い主は神殿の祭司たちのためにでも、会堂で律法を教える学者たちのためでもなく、本当に救いを必要としている人々のために、羊飼いのような人たちのために生まれてくださったのです。ダビデの町、ベツレヘムでお生まれになった救い主は、飼葉おけに寝ておられるというのです。もし、救い主が神殿で生まれたなら、羊飼いたちは、簡単には救い主を見ることはできなかったでしょう。救い主が王宮に生まれたとしたら、羊飼いたちは、そこに近づくことすらできなかったでしょう。しかし、救い主は飼葉おけに寝ておられるというのです。飼葉おけがあるところ、それは、羊やヤギ、ロバや牛をつなぎとめておく、家畜小屋です。羊飼いにとって家畜小屋ほど勝手の知ったところはありません。飼葉おけほど見慣れたものはありません。羊飼いたちは、救い主は、他の誰のためでもない、自分たちのために生まれてくださったということを、天使のメッセージによって知りました。羊飼いが大きな喜びに満たされたのは、自分たちの救い主が生まれたという知らせを聞いたからでした。
イエス・キリストはすべての人の救い主です。しかし、「キリストは全人類の救い主である。」というだけでは、それはあなたの喜びにはなりません。「キリストは私の救い主です。」ということが本当に分かる時、あなたの心は本物の喜びで満たされるのです。車のライセンスを更新するときに、ライセンスプレートを、DMV が決めたナンバーではなく、何か意味のある言葉にしませんかという案内が入ってきます。それを「パーソナライズ」と言いますね。バッグやドレスシャツにイニシャルを入れたり、自分の名前やアドレスの入った便箋などを作る人もいます。「パーソナライズ」することによって、自分の持っているものをもっと大切にし、誇ることができます。そのように、みなさんは、イエス・キリストを「パーソナライズ」しているでしょうか。信仰とは、キリストを「私の」救い主とすることです。"My Saviuor" "My Lord" "My Jesus" と呼ぶことができるのは、なんと幸いなことでしょうか。そしてなんと喜びに満ちたことでしょうか。
二、救い主を見出す喜び
羊飼いたちの喜びは、第二に、飼葉おけに寝ている救い主を見つけ出した喜びでした。誰でも、何か大切なものを見つけ出した時は大変うれしいものです。大切なものの中でも最高に大切なもの、救い主を見つけ出した羊飼いの喜びはどんなだったろうと思います。
天使は、羊飼いに、救い主を見つけ出すのに十分なヒントを与えました。ベツレヘムの町はそんなに大きな町ではありません。その夜、そこで生まれた赤ちゃんが何人もいるわけはありません。まして、家畜小屋の飼葉おけに寝かせられている赤ちゃんといえば、マリヤが産んだ赤ん坊以外にありません。羊飼いが救い主を見つけることは、宝のありかをしめした地図をたよりに、ジャングルの奥深くを探検するように難しいことではありませんでした。羊飼いにとって、救い主を見つけたも同然でした。しかし、なお、実際に救い主を見つけるには、ベツレヘムに向かわなければなりませんでした。救い主がどこに生まれたかを知っていることと実際にそこに行くこととは別ですね。赤ん坊はいつまでも飼葉おけに寝かせられているとは限りませんし、ヨセフとマリヤはもいつまでも家畜小屋にはとどまっているわけでもないからです。羊飼いは、天使の声を聞いたその時、すぐに、ベツレヘムの町に走って行かなければ、救い主を見つけることはできなかったでしょう。
同じように、神は、私たちにも、立ち上がってベツレヘムに向かいなさい。救い主を探し、見つけ出しなさいと言っておられます。しかし、それは難しいことではありません。救い主への道は、暗号を解き明かさないと分からないような謎めいたものでも、頭の良い人だけが分かるような哲学的なものでもありません。神は、聖書に、誰にも分かるように、救いの道を示しておられます。「イエス・キリストが私の罪のために死に、私を滅びから救うためによみがえられたと信じるなら、誰でも救われる。」と聖書は教えています。なのに、なぜ、多くの人が救い主を見出すことができないのでしょうか。それは、神のことばという地図に従わずに、自分勝手に探し求めているからです。もっと道徳的になれば、宗教的になれば、救いを見出すことができる、教会で数多くの奉仕活動をすれば、たくさんの献金すれば、それで天国に場所を確保することができるなどと思いこんで、救いに至る地図を自分勝手に作り出しているからなのです。そうではなく、聖書が示している救いへの道に従いましょう。幼な子のように悔い改め、信じ、あわれみを求めて、救いを得ましょう。救い主を見い出しましょう。
神は、あなたの遠くにおられるお方ではありません。救い主は、あなたのすぐそばに、手の届くところにおられるのです。神は言われます。「あなたがたがわたしを呼び求めて歩き、わたしに祈るなら、わたしはあなたがたに聞こう。もし、あなたがたが心を尽くしてわたしを捜し求めるなら、わたしを見つけるだろう。」（エレミヤ29:12-13）主イエスも言われます。「求めなさい。そうすれば与えられます。捜しなさい。そうすれば見つかります。たたきなさい。そうすれば開かれます。だれであれ、求める者は受け、捜す者は見つけ出し、たたく者には開かれます。」（マタイ7:7-8）あなたも、このクリスマスに、救い主を "My Saviour" として見出す喜びを味わってください。
三、救い主を見る喜び
第三に、羊飼いたちは救い主を直接その目で見て喜びました。羊飼いたちが天使を見たこと、天に現れた神の栄光を見たことだけでも、すごいと思うのですが、羊飼いは、それよりももっと偉大なものを見たのです。神の使いではなく、神そのもの、神の栄光の現われでなく、人となられた神を見たのです。
私は、他の人からイエスの幻を見た、天使を見たという体験を良く聞きます。ついこの間も、ある牧師からこんな話を聞きました。その先生がエンジニアとしての将来を買われ、会社から奨学金を出してもらって大学院で勉強していた時のことです。神に仕える道を歩むのか、それともエンジニアとして成功する道を取るのかということを考えていて、夜中に目が覚め眠れなかったそうです。心を静めるために、ステレオをつけてレコードを聴いていたのですが、その時「しっかりせよ。私が共にいる。あなたの願うことは成就する。」という声を聞いたそうです。それは低い声でしたが、はっきりとしたものでした。レコードにそういうものが録音されていたのかと思って、あとで繰り返しレコードを聴いても、それは楽器の演奏だけのレコードでそのような声は入っていなかったそうです。そうしたことは、先生の生涯で後にも先にも一度だけのことだったそうですが、その声は、先生を献身の道へと導くものとなりました。
私には、そのように神の声を音声として聞いたという体験はありません。イエスのお姿を夢でも、幻でも見たことはありません。もっとイエスのことを深く思いながら毎日過ごせば、イエスの夢を見ることができるのだろうかと思うこともあります。しかし、私は、夢以上に確かに、みことばの中にイエスを見ています。私は天使も見ています。神のために働き、人々のために祈っている人々のことです。その人たちの背中には羽はありません。それどころか車椅子の助けを借りなければならなかったり、ベッドに寝たきりであったりします。ある人は、ほとんど視力を無くし、不自由な生活をしています。また、この世の基準から見れば、経済的にも、家庭的にも、健康の面でも幸薄い人たちです。しかし、その人たちは神の愛に満たされて、私と私の家族のために祈り、支え、助けてくれました。彼らは、神が私に遣わしてくださった天使です。キリストの幻を見、奇蹟を目のあたりにし、主の栄光を夢で見るという体験は素晴らしいものです。しかし、そうした目に見える体験がなくても、私たちは、みことばの中でキリストに出会うことができます。キリストの外側のお姿を見ることがなくても、キリストのお心の中を見ることができるはずです。そういった意味で、私は、すべての人が聖なるものに出会うという体験をして欲しいと願っています。そして、この主の日の礼拝の場が、私たちが神に出会い、救い主に出会う場であるようにと、心から願っています。
「神がいるなら見せてみろ。私の目の前に現れた信じてやろう。」などと言う人がいますが、もし、神がその人に直接現われたなら、その人は即座に息絶えてしまうでしょう。罪深い人間が聖なる神を直接見ることはできないし、その栄光にさらされてもなお生きていられるわけはないからです。だからこそ、神はご御子を人として、しかも赤ん坊としてこの地上に遣わしてくださったのです。天使を見て恐れる人はあっても赤ん坊を恐れる人はいません。プロレスラーのような大男が突然目の前に現れたなら、だれでも怖いでしょうが、赤ちゃんを怖がる人はありません。神は、御子を神々しい姿で地上に遣わすことが出来たかもしれませんが、御子を私たちと何も変わることのないふつうの赤ん坊として遣わしてくださいました。それは、私たちが、恐れなく神を見ることができるためだったのです。
羊飼いたちが、天使の伝えたメッセージによって救い主を見たように、私たちも、神のことばに導かれて、救い主に出会うことができます。私たちは、イエス・キリストがこの地上を歩まれた時から二千年後の時代にいて、イエス・キリストを直接見ることはできません。しかし、私たちはみことばの中で、今も、生きておられる私たちの主キリストに出会うのです。天使が「恐れることはありません。」と語りかけたよう、神のことばを聞く者は、恐れなく主にお会いでき、喜びに満たされるのです。羊飼いたちが「喜びの知らせ」に聞き救い主を見たように、私たちも、みことばに聞き、私たちの主を見るものとなりましょう。そして喜びに満たされましょう。
（祈り）
喜びのみなもとである神さま、今朝、私たちは「喜び」のキャンドルに火を灯して、羊飼いが体験した喜びがどんなものであったかを思い見ました。羊飼いたちは、キリストを自分の救い主と信じ、喜びました。羊飼いたちは、救い主を飼葉おけの中に捜し当てて、喜びました。羊飼いたちは、救い主をその目で見て喜びに満たされました。神さま、私たちにも、主を私の主と呼ぶ喜びを、主をみことばの中に見いだす喜びを、そしてなによりも、主とお会いする喜びを与えてください。そして、羊飼いが天使たちから聞いた喜びのメッセージを人々に伝えたように、私たちをもまた、この喜びを人々に伝える、あなたの使い（エンジェル）としてください。救い主イエスのお名前で祈ります。
12/17/2006