神の愛と永遠の命

ヨハネ3:16

神はそのひとり子を賜わったほどに、この世を愛して下さった。それは御子を信じる者がひとりも滅びないで、永遠の命を得るためである。

　3月16日は、「ヨハネ3の16の日」です。この日、誰かに、この御言葉を伝えましょう。メールで、テキストで、電話で、直接、顔と顔とを合わせて。聖書の言葉を伝える一番良い方法は、相手の方に聖書を開いてもらい、その箇所を読んでもらうことです。人から聞いた言葉ではなく、直接、神の言葉を読むことは、神の言葉を自分のものにするのに一番良い方法です。聖書一冊を送るのが大変なら、ここにヨハネの福音書だけのものがあります。必要な分だけ持ち帰って、神の言葉をひろめてください。

　一、神の愛

　2014年の3月16日はちょうど日曜日でした。その日、わたしは、ヨハネ3の16から「人を救う神の愛」という題でお話しました。神の愛は、第一に「逆説の愛」、第二に「犠牲の愛」、第三に「無償の愛」であるというお話しでした。

　「逆説の愛」というのは、神が「この世」を愛してくださったからです。聖書で「世」という言葉は、神を締めだした社会、神に逆らう勢力、また、神に喜ばれない汚れた思いを指します。ところが神は、神を否定し、神に逆らう者、また、聖なる神とは決してまじわることのない罪に染まった者さえ愛し、救い、受け入れようとされたのです。

　「犠牲の愛」というのは、神がそのひとり子を「賜わった」からです。神は世を、罪びとであるわたしたちを愛されました。だからといって、この世を是認なさったわけでも、人の罪を不問にされたわけでもありません。罪は必ず結果を生みます。人は自分が犯した罪の結果を引き受けなくてはなりません。しかし、神は、「罪の支払う報酬」である「死」と「裁き」を御子イエス・キリストに引き受けさせました。神は、わたしたちを罪から救うために、ご自分の「ひとり子」さえも犠牲にされたのです。

　「無償の愛」というのは、この救いが「信じる」ことによって得られるからです。救いを求め、イエス・キリストを信じる者には誰でも救われるのです。

　誰でも「愛」という言葉は好きです。世界で最も愛されている言葉は、おそらく「愛」でしょう。人は「愛」を求めます。「愛」にあこがれます。ときには幻想をいだくことさえあります。そして人は、時に、「愛」に破れます。「愛」を失います。「愛」が憎しみに変わることさえあります。なぜでしょう。それは、人の愛が神の愛に支えられていないからです。わたしたちは、神の愛を知ってはじめて、神と人とを愛することができるようになります。愛の神は、ヨハネ3の16によってご自分の愛をわたしたちに知らせてくださっています。

　二、救いへの招き

　さて、ヨハネ3の16の後半は、私たちにイエス・キリストの救いが必要なわけを告げています。「それは御子を信じる者がひとりも滅びないで、永遠の命を得るためである」とあるように、イエス・キリストの救いなしには、わたしたちは滅びる運命にあり、永遠の死に向かっているからです。聖書は「死ぬことと、死んだ後さばきを受けることとが、人間に定まっている」（ヘブル9:27）と教えています。世を去って、聖なる神の前に立たされ、さばきを受けるとき、誰が「わたしは大丈夫」と言うことができるでしょうか。

　これは、考えると恐ろしいことです。ですから、多くの人は、こうしたことはできるだけ考えないようにしています。パスカルは、こう言っています。

人間は、死と不幸と無知とを癒すことができなかったので、幸福になるために、それらのことについて考えないことにした。（パンセ §168）

　今もそうかもしれませんが、日本では、今までの型にはまった葬式ではなく、個性的な葬式をするため生きている間に自分の葬式をアレンジすることが流行したことがありました。また、「生前葬」といって生きているうちに自分で自分の葬式をする人も現われました。最近は、人生の最後に備えることを「終活」と呼ぶようになり、それが奨励されています。しかし、そこには、老後の生活、葬式、また遺言に備えることはあっても、地位、名誉、財産、人間関係などの一切を地上に残し、ただひとり神の前に立つ時に備えるということはありません。わたしたちにとって、一番大切なことは、「葬式」の準備ではなく「死」そのものに備えることです。「神に会う備え」（アモス4:12）をすることです。詩篇に「われらにおのが日を数えることを教えて、知恵の心を得させてください」（詩篇90:12）という祈りがあります。これこそ、わたしたちに必要な祈りです。

　では、どのようにして「神に会う備え」をしたらよいのでしょうか。その第一は、神がすでに備えていてくださっているものを受け入れることです。神は、わたしたちが自分の力で神の前に立つことができないことをご存知で、わたしたちに「罪からの救い」を備えてくださいました。イエス・キリストは、わたしたちの罪を背負うことによって、わたしたちが神の前に立つことができる立場を与えてくださいました。イエス・キリストはわたしたちの罪を引き受け、ご自分の「義」（正しさ）をわたしたちに与えてくださいました。罪のないイエス・キリストは、「罪人」とその立場を入れ替わることによって、罪人を「義人」の立場に立たせてくださったのです。

　イエス・キリストの「義」なしには、わたしたちは神の前に立つことはできません。「千歳の岩よ」（新生讃美歌543）はこのことを次のように歌っています。

千歳の岩よわが身を囲め
さかれし脇の血しおと水に
罪も汚れも洗い清めよ

見ぬ世に移りてまみゆるその時
主の義をまといてみ前に立たまし

　神は、「御子を信じる者がひとりも滅びない」ために、イエス・キリストによってすでに救いを用意してくださっているのです。神が、その最愛の御子を「滅ぼして」まで、わたしたちを「救う」ために用意してくださったものを、拒否することが、どんなに愛の神を悲しませることか、考えてみたことがあるでしょうか。愛の神は、ヨハネ3の16によって、わたしたちを救いに招いてくださっているのです。この招きに答えましょう。

　三、永遠の命

　「神に会う備え」の第二は、イエス・キリストとともに、またイエス・キリストに従って生きることです。神は、イエス・キリストを信じる者を、滅びから救ってくださるだけでなく、信じる者に「永遠の命」を与えてくださいます。ヨハネ3:16は、信じる者に「永遠の命」が与えられていることを教えています。

　生まれつきの命はいつか終わりを迎えます。聖書には「われらのよわいは七十年にすぎません。あるいは健やかであっても八十年でしょう」（詩篇90:10）とあります。地上の命には限りがあります。もし、永遠の命を持っていなければ、死後の永遠をどう過ごすのでしょうか。しかし、イエス・キリストを信じて永遠の命を持っている者は、地上の命が尽きる時も恐れません。すでに受けている永遠の命が信じる者を生かし続けるからです。信じる者は「永遠の命」によって「神とともに永遠の世界で生きる」ことができるのです。

　しかし、それと同時に、「永遠の命」は、この地上で、神のみこころにそって生きるための命でもあるのです。人は、生まれつきの命によっては、どんなに努力しても、神の子どもになり、神にならうことができません。信じる者には、「義とされる」という立場や「神の子ども」という身分だけでなく、神の子どもとしての性質や、そこから生まれる正しい行いが必要です。神は、信じる者を聖霊によって新しく生み、神の子どもとしての性質を与え、聖霊を宿らせ、正しい行いができる力を与えてくださいました。生まれつきの命は、この世に生きる命です。しかし、永遠の命は神の国に生きる命です。生まれつきの命は自分のために生きる命ですが、永遠の命は、神のために生きる命です。永遠の命を与えてくださる神は、わたしたちに、この地上で、その命に生かされた生活をし、人生を送るようにと命じておられるのです。

　ヨハネ3の16で使われている「滅びる」という言葉は、ルカ15章では「失われる」と訳されています。ルカ15章には三つの失われた者が書かれています。子羊と、銀貨と、息子です。それぞれ価値あるものがその価値を失い、目的あるものが目的を失っていたのです。多くの人が、自分が神のかたちに造られた価値ある存在であることを知らないでいます。また、神のために生きるという目的を忘れ、互いに競いあい、傷つけあって生活しています。死後、神の前に立つ時を待たなくても、すでに「滅びている」ことを、その生活が言い表しているのです。

　神はイエス・キリストを信じる者が単に天へのパスポートを手にするだけでなく、信じたその日から天に向かう信仰の旅をするように願っておられます。かつて人生の目的を失い、すでに滅びていた者が、神のために生きる、新しい生活、新しい人生に踏み出すために、神は永遠の命をくださったのです。ヨハネ3の16は、イエス・キリストを信じるようにと教えるばかりでなく、イエス・キリストを信じて与えられる新しい命に生きるようにと教えています。イエス・キリストを信じることと、キリストに従うこと、このふたつは切り離すことができません。このふたつがひとつになったもの、それが福音です。

　ある人がヨハネ3:16を次のように並べて書きました。最初の行の G を下にたどると、"GOSPEL"（福音）と読むことができます。まさに、ヨハネ3:16 は福音の要約です。

              For God so loved the world
 that He gave his Only
         begotten Son, that whoever believes
in Him should not Perish
         but have Everlasting
                  Life

　ヨハネ3:16は、まだクリスチャンでない人たちのためだけの聖句ではありません。クリスチャンに、「永遠の命」を授かっていることを教え、その命に生きるよう教えている聖句です。まずクリスチャンが永遠の命によって福音を生きるとき、人々はそれによってヨハネ3:16に要約されている福音を理解することでしょう。この福音に生き、この福音を証しすることに、熱心に励みたいと思います。

　（祈り）

　父なる神さま、わたしたち罪人にイエス・キリストを賜った、あなたの深い愛にこころから感謝します。あなたは、信じる者に、罪のさばきからの救いばかりでなく、罪の力からも救われ、この世を、目的を生きることのできる命をもお与えくださいました。わたしたちは、やがて、罪の存在そのものからも救われる天を目指して歩みます。あなたの愛がその歩みに伴っていることを、常に覚えさせてください。イエス・キリストのお名前で祈ります。

3/11/2018