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ヴァイゼッカー大統領の演説 1942年12月7日(日本では8日)、真珠湾攻撃によって太平洋戦争がはじまり、1945年8月15日に戦争が終りました。日米の歴史に大きなきしみとなった太平洋戦争から、かれこれ60年の年月が経ったのですね。日本の敗戦の日を思いながら、私の心に思い浮かんだのは、なぜか西ドイツのヴァイゼッカー大統領が1985年5月8日に連邦議会で行った演説でした。ドイツの無条件降伏は1942年5月8日(日本では7日)のことでしたので、この演説は敗戦四十周年を記念してのものでした。 ヴァイゼッカー大統領は、ドイツがヒットラーのもとで犯した罪を率直に告白し、そのことを忘れてはならないと説いて、「問題は過去を克服することではありません。さようなことができるわけはありません。後になって過去を変えたり、起こらなかったことにするわけにはまいりません。しかし過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥りやすいのです。」と言っています。そして、ヨーロッパの諸国に対して、また、当時分断されていた東西のドイツ人に向かって「和解」を呼びかけています。「相手が手を差し出すのを待つのではなく、自分の方から相手に手を差し出すことは、はかりしれないほど平和に貢献するものであります。」(永井清彦訳『荒れ野の四十年』岩波書店より) 私は、ヴァイゼッカーの演説を読むたびに感動を覚えます。彼が誠実なクリスチャンで、政治のことばかりでなく、神のことばと人の心を良く知り、それに触れているからです。戦争は、人の心からはじまります。ヒトラーは偏見と敵意と憎悪とをかきたて、人々を戦争に引き込みました。戦争は、遠い過去のことではありません。私たちはイラク戦争を体験したばかりであり、偏見、敵意、憎悪は、私たちの回りに今もあります。聖書に「キリストこそ私たちの平和であり、二つのものを一つにし、隔ての壁を打ちこわし、ご自分の肉において、敵意を廃棄された方です。」(エペソ人への手紙2章14-15節)とあるように、キリストによる平和を心の内に、おたがいの間に保ちたく思います。 (2003年8月)
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