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母 の 涙 アウグスティヌスと言えば、古代の教会の教父、また哲学者として知られ、今なお、多くの人々から「聖アウグスティヌス」として尊敬を受けている人物です。しかし、このアウグスティヌスも、若いころは、とんでもない生活をしていました。彼は、16歳の時、親もとを離れて、北アフリカのカルタゴという街に行きますが、そこで、ひとりの女性と同棲し子どもをもうけるようになるのです。おまけに、母から受けた信仰の教えを捨てて、当時のローマ世界にいきわたっていた「マニ教」という宗教に入信してしまうのです。 モニカは、マニ教に走って行った息子のことで、教会の司教に相談しました。司教は「息子さんをそのままにしておきなさい。ひたすら彼のために主に祈りなさい。息子さんは彼らの書物を読んでいるうちに、それが何という誤謬であるか、何という大きな不敬虔であるかを、いつか悟るでしょう。」と、モニカに話すのですが、それでも、彼女は泣き続けました。その時、この司教は言いました。「さあ、お帰りなさい。大丈夫ですよ。このような涙の子が滅びるはずはありません。」 この言葉の通り、アウグスティヌスは母の涙の祈りによって、不道徳と、誤った教えから立ち返ったのです。アウグスティヌスは母の祈りについて、こう書いています。「彼女は日に二度、朝と晩、かかすことなく教会をおとずれましたが、それは、説教の中であなたのことばを聞き、また彼女の祈りの中であなたが彼女のことばを聞きたもうためでした。彼女が涙ながらにあなたに乞いもとめていたものは、ひたすら息子の救済だけでした。このような母の涙をあなたが軽んじて、援助をこばむことがありえたでしょうか。」(告白5:9) 子どものために涙を流さない母親はいません。「涙の子は滅びない」とのことばは、ひとり、アウグスティヌスの母、モニカばかりでなく、世の多くの母親の慰めとなり、励ましとなってきました。「わたしはあなたの祈りを聞いた。あなたの涙も見た。」(イザヤ38:5)と言ってくださる神は、かならず、祈りに答えてくださるのです。 (2003年5月)
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