祈りの花束

イエスのご受難をたどる祈り

エルサレムにはイエスが十字架を負って歩まれた「悲しみの道」(ヴィァ・ドロロッサ)があり、イエスを慕う人々はエルサレムを訪れ、その足跡をたどりました。やがて、巡礼に参加することができない人々のために「十字架のステーション」がつくられるようになりました。「十字架のステーション」を普及させたのは、フランシスコ会司祭の聖レオナルド(1676〜1751年)で、彼は黙想会で「十字架のステーション」について説教し、イタリア全土の 571カ所に「十字架のステーション」を設置したといわれています。

キリスト者はすべて信仰の巡礼者です。イエス・キリストの受肉、受難、死と復活という信仰の奥義に向かって旅する者たちです。「十字架のステーション」をたどることは、たんに、重い心で、過去の出来事をふりかえるだけのことではなく、それぞれのステーションで、なぜイエスが十字架を背負われたのか、イエスを信じ、イエスに従う者はどのように自分の十字架を背負うのかを静かに想いみることによって、信仰の奥義を学び、主のご受難の中に信仰の旅路を歩き続ける力を見出すのです。

最初の祈り

主よ、あなたがかつて歩まれた苦しみと死への道を、私は今、たどろうとしています。主よ、私と共にいて、私のしぶる心を取り除いて、あなたが、私への愛のゆえに成し遂げてくださったみわざを見るものとしてください。

わが神よ、私を励まして、勇敢にあなたの足跡をたどり、あなたに従って、自分の十字架を負う者としてください。

いにしえの預言者が、「神である主は、私に弟子の舌を与え、疲れた者をことばで励ますことを教え、朝ごとに私を呼びさまし、私の耳を開かせて、私が弟子のように聞くようにされる。」(イザヤ50:4)と言ったのは、じつに、あなたのことでした。

主よ、あなたの傷口から私に語りかけてください。私の疲れ果てたたましいを、あなたの愛のお心にまで引き上げてください。

第1ステーション 死刑の宣告を受ける

(祈り)
主キリスト、あなたを礼拝し、賛美します。あなたは尊い十字架とご死去をもって、世をあがなってくださいました。

(聖書)
マタイ27章22~26節

(説明)
イエスは、何の罪も咎もないのに、人びとの救いのために、ピラトの不正な死刑の宣告をお受けになりました。

(黙想)
愛するイエスよ、あなたは、自らが罪となられることによって、私を義としてくださいました。ですから、私が、神の国と神の義とをまず第一に求めることができるようにしてください。神の義のゆえに、この世で悲しみ、苦しみ、悩む時も、「私の思いではなく、み旨が行われますように」と祈ることができるよう、助けてください。そして人生の最後の死をも、平安をもって迎えることができるよう導いてください。

(祈り)
聖霊なる神よ、十字架に釘づけられた御子の傷を、私の心にしるしてください。

第2ステーション 十字架を担わされる

(祈り)
主キリスト、あなたを礼拝し、賛美します。あなたは尊い十字架とご死去をもって、世をあがなってくださいました。

(聖書)
ヨハネ19章17節

(説明)
イエスは、私たちの罪のため、重い十字架を担われました。

(黙想)
主イエスよ、あなたは「わたしについて来たい者は自分を捨て、自分の十字架を背負って、わたしに従いなさい」と招いておられます。私は日々の十字架を背負ってあなたに従いたいと願っています。十字架を負って歩く道は狭くても、天国に通じる道です。私をみもとに引き寄せてください。私の導き手となり、慰め手となってください。

(祈り)
聖霊なる神よ、十字架に釘づけられた御子の傷を、私の心にしるしてください。

第3ステーション 十字架の下に初めて倒れる

(祈り)
主キリスト、あなたを礼拝し、賛美します。あなたは尊い十字架とご死去をもって、世をあがなってくださいました。

(聖書)
詩篇38篇1~8節

(説明)
ゲッセマネの苦しみに打ちひしがれ、むち打ちといばらの冠に傷つけられ、徹夜の末に力尽きたイエスは、重い十字架の下に初めて倒れました。

(黙想)
主よ、あなたは、正しい者は倒れることはないと約束されたのに、ご自身が倒されています。それは、罪に陥り倒れやすい私を支えるためでした。悪魔と世の誘惑が多い中で、主よ、私を試みにあわせることなく、過去、現在、未来の悪から救ってください。

(祈り)
聖霊なる神よ、十字架に釘づけられた御子の傷を、私の心にしるしてください。

第4ステーション 母マリヤに出会う

(祈り)
主キリスト、あなたを礼拝し、賛美します。あなたは尊い十字架とご死去をもって、世をあがなってくださいました。

(聖書)
ルカ2章34~35節

(説明)
イエスは、母マリヤの見ている前で苦しみ、死んでいかれました。

(黙想)
母マリヤは、御子を産むという尊い務めをさずかったばかりでなく、御子を信じ、従い、御子に仕える信仰も与えられていました。弟子たちがイエスを見捨てたときも、母マリヤはイエスと苦難を共にしました。母マリヤの心はイエスの受難と結びついていました。主よ、私の心をも、あなたのご受難と結びついていますように。すべてのことをイエスのためにした母マリヤに倣うものとしてください。

(祈り)
聖霊なる神よ、十字架に釘づけられた御子の傷を、私の心にしるしてください。

第5ステーション シモンがイエスの十字架を背負わされる

(祈り)
主キリスト、あなたを礼拝し、賛美します。あなたは尊い十字架とご死去をもって、世をあがなってくださいました。

(聖書)
マルコ15章21節

(説明)
人びとは、通りかかったクレネのシモンに、イエスの十字架を強いて背負わせました。

(黙想)
主よ、クレネ人シモンがイエスの十字架を負ったように、私もイエスの十字架を負うものとしてください。それが進んでであろうと、強いられてであろうと、主の十字架を負うことは正しいことです。人びとが罪から救われ、あなたの国に迎え入れられるために、私の小さな犠牲をも用いてください。

(祈り)
聖霊なる神よ、十字架に釘づけられた御子の傷を、私の心にしるしてください。

第6ステーション ヴェロニカ、イエスのみ顔を拭う

(祈り)
主キリスト、あなたを礼拝し、賛美します。あなたは尊い十字架とご死去をもって、世をあがなってくださいました。

(聖書)
マタイ10章40~42節

(説明)
ヴェロニカは、心うたれて、イエスのみ顔を拭い、イエスは、その布にみ顔を写して彼女に報いたと伝えられています。

(黙想)
主よ、あなたは私たちの小さな愛のわざを覚えていてくださいます。「神は正しい方であって、あなたがたの行いを忘れず、あなたがたがこれまで聖徒たちに仕え、また今も仕えて神の御名のためにしめしたあの愛をお忘れにならないのです。」(ヘブル6:10)とのみことばに励まされて、隠れたわざに励むものとしてください。

(祈り)
聖霊なる神よ、十字架に釘づけられた御子の傷を、私の心にしるしてください。

第7ステーション 再び十字架の下に倒れる

(祈り)
主キリスト、あなたを礼拝し、賛美します。あなたは尊い十字架とご死去をもって、世をあがなってくださいました。

(聖書)
イザヤ53章1~3節

(説明)
「軽蔑され」、「人びとに見捨てられた」イエスは、力衰え、再び十字架の下に倒れました。

(黙想)
主なるイエスよ、すべての罪は、あなたの主権に対する侮辱であり、それは恐ろしい裁きを招くものです。あなたは、人間の侮辱を黙って耐えることによって、私たちの犯した罪を償ってくださいました。私は、悪意をもって正義にはむかい、真理を憎んできましたが、今はこの世の悪に立ち向かい、私の罪を憎みます。私が、あなたをさげすむという罪を、再び犯すことがないようお助けください。

(祈り)
聖霊なる神よ、十字架に釘づけられた御子の傷を、私の心にしるしてください。

第8ステーション 嘆き悲しむ女性たちを慰める

(祈り)
主キリスト、あなたを礼拝し、賛美します。あなたは尊い十字架とご死去をもって、世をあがなってくださいました。

(聖書)
ルカ23章27-28節

(説明)
イエスの身の上を嘆き悲しむ多くの女性が、イエスのみあとに従いました。イエスは、彼女たちに向かい、何のために嘆き悲しむべきかを教えました。

(黙想)
主よ、あなたは、あなたに対する人間的な同情によってではなく、自分の罪をしっかりと見つめて、それを嘆くようにと教えられました。人々から受けたしうちや、自分の身の上に起こった不幸だけを嘆いて終わりやすい私に、自分が犯した罪、なすべきことを怠った罪を嘆くことを教えてください。主よ、私を真実な悔い改めに導き、罪を力の限り防ぐ恵みを私にお与えください。

(祈り)
聖霊なる神よ、十字架に釘づけられた御子の傷を、私の心にしるしてください。

第9ステーション 三度十字架の下に倒れる

(祈り)
主キリスト、あなたを礼拝し、賛美します。あなたは尊い十字架とご死去をもって、世をあがなってくださいました。

(聖書)
イザヤ53章4~6節

(説明)
イエスは三度十字架の下に倒れました。私たちが、心のかたくなさによって、罪を重ねているからです。

(黙想)
主よ、かたくなさは人の目を曇らせ、心を閉ざし、私たちを悔い改めから遠ざけます。主よ、あなたの前に、常にへりくだって、あなたのあわれみを求める者としてください。自分があなたにふさわしい者であるなどと思うことなく、常にあなたの恵みに頼る者としてください。

(祈り)
聖霊なる神よ、十字架に釘づけられた御子の傷を、私の心にしるしてください。

第10ステーション 衣服をはがされる

(祈り)
主キリスト、あなたを礼拝し、賛美します。あなたは尊い十字架とご死去をもって、世をあがなってくださいました。

(聖書)
哀歌 1章21-22節

(説明)
ゴルゴタにたどり着かれたイエスは、兵士から衣服をはがされ、その衣服はくじで分けられました。

(黙想)
主よ、私は、なんとしっかりと、虚栄の衣をまとっていることでしょうか。そして、あなたの前には、惨めなぼろをまとっている者、裸の恥をさらしていることを忘れているのです。主よ、私を「キリストを着る」者としてください。最高、永遠の幸福であるあなただけを求めるために、すべての野心と世俗的な満足から絶えず自分の心を引き離す恵みを与えてください。

(祈り)
聖霊なる神よ、十字架に釘づけられた御子の傷を、私の心にしるしてください。

第11ステーション 十字架につけられる

(祈り)
主キリスト、あなたを礼拝し、賛美します。あなたは尊い十字架とご死去をもって、世をあがなってくださいました。

(聖書)
ヨハネ19章17~19節

(説明)
イエスは言い表し得ない痛みのうちに、十字架に釘づけられました。

(黙想)
主よ、人々は憎しみを込めてあなたを十字架に釘づけました。また、「もし、神の子なら、そこからおりて来い。そうしたら、信じてやろう。」とののしりました。しかし、あなたは、私の罪を贖うために十字架に留まり続けてくださいました。あなたを十字架に留めたものは、憎しみの釘ではなく、私たちへの愛でした。今も臨終の時も、永遠に、私をあなたのものとしてください。主よ、あなたから離れることのないように、あなたの愛をもって、私をあなたのもとに留めてください。

(祈り)
聖霊なる神よ、十字架に釘づけられた御子の傷を、私の心にしるしてください。

第12ステーション 十字架上で息をひきとる

(祈り)
主キリスト、あなたを礼拝し、賛美します。あなたは尊い十字架とご死去をもって、世をあがなってくださいました。

(聖書)
ルカ23章44~46節

(説明)
イエスはこの上ない苦しみを忍ばれた後、十字架の上で息を引き取られました。

(黙想)
主よ、いのちの主である、あなたが死なれたとは、なんということでしょうか。神が死なれるとは、あってはならない恐ろしいことです。しかし、それ以外に、私の罪が贖われる方法はありませんでした。その他に、罪の中に死んでいた私が生かされる手段はありませんでした。世の罪を負い神の子羊として死なれた主よ、あなたに限りない感謝をささげます。

(祈り)
聖霊なる神よ、十字架に釘づけられた御子の傷を、私の心にしるしてください。

第13ステーション 十字架より下ろされる

(祈り)
主キリスト、あなたを礼拝し、賛美します。あなたは尊い十字架とご死去をもって、世をあがなってくださいました。

(聖書)
ヨハネ19章38節

(説明)
イエスのおからだは、ひそかにイエスを信じていたニコデモと、アリマタヤのヨセフによって十字架から取りおろされました。

(黙想)
人をはばかって、この時まで信仰を言い表わすことができなかったニコデモとヨセフのふたりでしたが、彼らはあなたの十字架に心打たれ、あなたのおからだを葬ることを願いました。主よ、臆病な私のこころを、あなたの十字架で強くしてください。あなたの十字架を恥としない信仰を与えてください。

(祈り)
聖霊なる神よ、十字架に釘づけられた御子の傷を、私の心にしるしてください。

第14ステーション 埋葬される

(祈り)
主キリスト、あなたを礼拝し、賛美します。あなたは尊い十字架とご死去をもって、世をあがなってくださいました。

(聖書)
ピリピ2章6~11節

(説明)
イエスのおからだは、死者たちの場所、墓に葬られました。しかし、三日ののち、イエスは、墓を破ってよみがえられました。

(黙想)
主よ、あなたは、天から降りてこられ、死んで墓に下るまでに、ご自分を低くされました。しかし、あなたは、墓に留まってはおられませんでした。墓を破って復活され、天に昇られました。あなたがへりくだられたことによって、また、あなたが高くあげられたことによって、私は、救われています。あなたが再び天から降りてこられる時、私も復活にあずかることができるようにしてください。そのために、私を、日々、新しいいのちに生きる者としてください。

(祈り)
聖霊なる神よ、十字架に釘づけられた御子の傷を、私の心にしるしてください。

終りの祈り

救い主キリストよ、十字架の力によって私を救ってください。 ペテロを湖で救われた主よ、私をあわれんでください。

神よ、あなたは、御子イエス・キリストの十字架の死によって、人類を救おうとお望みになりました。地上においてあなたの愛の神秘を知ったわたしたちに、天においても贖いの実りを味わわせてください。わたしたちの主イエス・キリストによって。アーメン。