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Philip の ちょっといい話

子育て真っ最中のお母さんたちへ

 五月は「子どもの日」と「母の日」があります。「子どもの日」と「母の日」があるのに「父の日」が無いのはかわいそうだと、誰かが六月に「父の日」を作ってくれました。五月、六月は、さながら「家族の月」といった感じですね。

 母の日と言っても、子育て真っ最中のお母さんたちには、母親であることの喜びをかみしめるよりは、ただ忙しいばかりで、かえって迷惑な祝日かもしれませんね。小さな子どもは予期しないことをしでかしますから、子育てとは、まったく骨のおれる仕事です。とりわけ、日本からアメリカにやってきて、言葉も習慣も違うところで出産、育児というのは大変なことです。日本でなら産後一週間は病院においてくれるのに、ここではよほどのことがない限り、さっさと家に返されます。家に帰って助けてくれる人がいるかと言えば、ここはアメリカ、両親も、兄弟も、親戚も、友だちも日本にいて、誰も助けてくれません。たったひとり頼りにしている夫も、会社に取られて頼りにならない、ということになると、あとは孤軍奮戦、「やるしかない」と失敗を重ねて、アメリカでの子育てが始まるのです。

 子どもが小学校、中学校と進むにつれ、肉体的には楽になりますが、ティーンエージャーをかかえて精神的には「苦悩の日々」という人も多いのではないでしょうか。日本語で叱ると、早口の英語で口答えが返ってくるといった具合に、親子のギャップをいやでも感じてしまう時がやがてやってきます。「母の日」だけ "I love you, Mom." なんて言っても、ちっともかわいくないと思ってしまうことだってあるでしょう。どんなに手をかけてやっても、ちっとも感謝されない、本当に子育てなんて割に合わない仕事だと、世の多くの母親たちは思っているようです。

 ですから、教会でも、子育ての話が良く出ます。自分の苦労を聞いてもらいたい、アドバイスが欲しい、具体的な助けが欲しいと、みんな思っています。でも、私は、あえて、「子育てから目を離してみたら」と申し上げるのです。子育てを放棄しなさいというのではありません。子育てだけにとらわれて「自分育て」を忘れていませんかと、言っているのです。自分を育てることなしに、子どもを育てることはできません。子どもの成長はとても早く、その速度についていくのは大変ですが、子どもの成長と共に、自分も人間としてどれだけ成長しているだろうかと、反省しながら、自分を養い育てていく、それが子育ての秘訣ではないかと思います。聖書には「生まれたばかりの乳飲み子のように、純粋な、みことばの乳を慕い求めなさい。それによって成長し、救いを得るためです」(ペテロ第一、二章二節)と書かれています。ミルクを飲んで成長する必要のあるのは、母親も同じなのです。

 「子育て真っ最中のお母さん!」と呼びかけられて、簡単に「は〜い」と答えてはいけません。あなたは「お母さん」である前に、一人の人間であり、一人の女性です。母親であることは素晴らしいことですが、「お母さん業」をしているあなただけがあなたでないことに気づいてください。そこから、何かが見えてくるはずです。

(2001年5月)

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